現場力の向上が3PL事業拡大のカギを握る
— 飛躍する“自走型組織” 「SCM事業本部」—
SCM事業本部
SCM第二事業部長代行 兼 流山ロジスティクスセンター長
部次長 林 昂平
ヒガシグループの中核を担う株式会社ヒガシ21。その中で飛躍的な成長を続けているのが、大手EC向け業務を中心に商品の入出庫・保管・加工までを一貫して手掛けるSCM事業本部だ。3PL事業の更なる拡大を見据え、顧客ニーズの高度化・多様化に応えるため、2025年4月に新たな組織体制をスタート。純粋な倉庫業務にとどまらず、より戦略的な視点で物流を支える存在へと進化している。この記事ではSCM事業本部の変化と成長、その背景にある考え方を紹介する。
3PL事業拡大に伴い2025年4月より新組織を発足
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2025年4月よりSCM事業本部として新体制がスタートしました。この組織再編に至った背景を教えてください。
林
これまでのSCM事業部では、各ロジスティクスセンター(以下、LC)を直接配下に置き、全体を大括りで管理・運営してきました。しかし組織再編後は、SCM事業本部のもとに「事業統括部(戦略企画)」「第一事業部(保管型センター運営)」「第二事業部(通過型センター運営)」を設け、業務内容ごとに分けて運営しています。
この組織再編の背景にあるのは、大手EC向け業務を中心とする、ヒガシ21の3PL事業の急速な拡大です。2019年の大手EC向け業務開始から、2023年には北大阪・流山・鳴尾浜の3拠点を新設、以降も年1拠点のペースで大規模LCの開設が続き、売上高・成長スピードともに当初の想定を大きく上回りました。こうした成長を受け、各センターを戦略的に統括することを目的としてSCM事業本部を発足。グループ内でも稀な事業本部制ですが、事業運営の円滑化に加え、各LC間の情報共有もよりスムーズになったと感じています。
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「事業統括部(戦略企画)」の業務内容や役割は具体的にどのようなものですか。
林
基本的な役割は、各LCが抱える課題をサポートすることです。日々の主役はあくまでも事業部で、統括部は事業拡大に必要な仕組みやスキルを整え、現場を支える立場にあります。
たとえば、私がセンター長を務める流山LCでは、2026年5月に予定している約15,000坪の増床に向けて、統括部がコンベアをはじめとしたマテハン機器の導入や、それに伴う予算調整などを進めています。こうした取組で得られた知見や好事例は、他のLCにも横展開しています。最近では、従業員の利便性向上を目的に、駐車場予約アプリを開発したこともありました。
統括部が特に大切にしているのは、従業員にとって働きやすい環境づくりです。これまで本社IT部門に依頼していたアプリ開発なども、組織再編を機にSCM事業本部内で内製化したことで、より迅速に現場の声を反映できる体制を整えました。これは日吉(日吉晋介 事業部長)の発想によるもので、異業界での豊富な知見を持つ日吉からは私も多くのことを学んでいます。
作業標準化で品質を守り、経験値で成長を加速
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SCM事業本部の発足で3PL事業の成長がさらに加速していると感じます。その要因は何だと思いますか。
林
現場力の向上だと思います。各LCが日々のオペレーションを確実に維持することが重要ですが、事業本部制への移行により、統括部が現場の課題解決をサポートできる体制が整ったことで、各LCの作業効率化や対応力が一層強化されています。 -
現場力の向上が、具体的にどう事業拡大につながっているのでしょうか。
林
現在お取引きしている大手ECサイト様とは、6年前にご縁をいただいたことが始まりでした。長期的にお付き合いしていくうえで重要なのは、臨機応変さとスピード感です。受注後は、3〜4ヵ月という短期間で安定した倉庫運営管理体制を構築しなければなりません。人材採用や人員配置を含めた運営管理は、当初は容易ではありませんでしたが、6年にわたって取り組む中で、立ち上げのプロセスはよりスムーズかつ再現性の高いものになっています。
その結果、当社には新拠点立ち上げや、定量データに基づく倉庫運営のノウハウが蓄積されてきました。こうした実績が高く評価され、新拠点開設の受注機会増加や、既存拠点での取扱い物量増加など、事業成長につながっています。
私たちの強みは、大手ECサイト様では取扱いが難しい大型商品や特殊形状の商品など、機械化・自動化だけでは対応しきれない領域も引き受けられる点にあります。こうした分野では、人の作業力が不可欠となるため、現場のオペレーション力を活かしたサービス提供をしています。
庫内作業では「作業標準書」を作成し、荷物の持ち方から身体の使い方に至るまで標準化しています。これにより、誰が作業しても一定の品質とスピードを保てる体制をつくり、業務の属人化を防いでいます。
個人的な話になりますが、以前の私は課題が生じると、自分一人の力で解決しようと抱え込んでしまうタイプでした。しかし、約500名が在籍する流山LCでは、一人の頑張りでどうにかなる物量ではありません。従業員を信じて任せ、感謝を忘れないよう意識するようになりました。そうした意識の変化が一人ひとりの自立を促し、結果としてLC全体の生産性向上につながっていると感じています。
従業員の声に耳を傾け、現場のモチベーションをアップ
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各センターには多くの従業員が働いていますが、現場のマネジメントでもっとも重視していることは何ですか?
林
やはり、従業員が働きやすい環境の整備です。各LCでは、職場に対する意見を匿名で自由に投稿できる仕組みをつくり、従業員の声を収集しています。投稿は毎日1~2件ほど、人間関係の悩みから庫内オペレーションや人員の配置、職場環境改善の要望まで多岐にわたります。収集した意見については、3日以内の対応を目標にしています。たとえば熱中症対策では、空調服の配布やこまめな休憩時間の確保、休憩室の快適化など、様々な取り組みを進めています。
また、流山LCではパートスタッフのシフトを16パターン用意し、なるべく自分に合った時間帯を選べるような工夫もしています。もっとも、近隣に物流センターが集まっているため、人材確保のための施策という側面もあります。シフトの柔軟さを強みとして、従業員のライフスタイルに合わせた働き方を提供し、離職率の低下につなげる。これも現場力向上のひとつの策ですね。
流山LCでは、現状の在籍人数約500名を、今後倍以上に増やしていく計画です。一人ひとりのモチベーションと生活水準の向上に配慮しながら、現場をしっかりまとめていきたいと思います。
スペシャリストが集まる「自走型」で、年間売上5倍を目指す
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今後の展望や、新たにチャレンジしたいことについて教えてください。
林
SCM事業本部を、“ひとつの会社”のような組織に成長させていきたいと考えています。各分野のスペシャリストが集まり、本社部門に過度に頼ることのない自走型の組織をつくりたいです。
実際に、採用強化が必要な局面では、リクルートの実務経験がある人材を迎え入れ、採用のスペシャリストとして中核的な役割を任せました。同じように、アプリ開発を担うITのスペシャリストや、倉庫内のマテハン設計を担うプロフェッショナルなど、専門性を持つ人材にも積極的に声がけしています。そうした体制が整えば、取引企業様、そしてその先の消費者様の多様なニーズにも、より柔軟かつスピーディーに応えられるようになるはずです。
今後の目標は、年間売上5倍の達成です。そのために、取引先企業様の拡大を目指し、営業活動にも力を入れています。より良いLC運営を試行錯誤しながら、そのナレッジを蓄積し、事業基盤の強化を進めています。SCM事業本部は、こうした取組を通じて、今後も持続的な成長を目指していきます。
これからの3PLに求められるのは、作業をこなす力ではなく、業務全体を設計する力だ。標準化によって品質を担保しつつ、スペシャリスト集団として独自性も発揮する。SCM事業本部はまさにその流れに舵を切り、仕組の改善を率先して進めている。
その姿勢こそが、次の時代を生き残る条件であり、事業の飛躍につながっていく。
